看護師は患者さんに対して回復してもらいたいという一心で治療にあたりますが、一方ではその人の言葉を素直に受け止められないこともあります。
ここでは、転移、逆転移という現象が生じています。
これは、患者さんが看護師に対して否定的な感情を向ける場合、患者さんの言動に対して嫌な感情が湧き上がったり、もう会いたくないと感じてしまうことで、向けてはならないと分かっていながらも拒否的な感情を抱くことを指しています。
人間として当然の反応ではありますが、看護教育の中ではマイナスの感情を抱くことは好ましくないと教えられるものです。
そのため、看護師自身が罪悪感を抱きやすくなります。
このような気持ちが生じた際、適切な教育者の元、何故拒否的な感情になったかについて、相手または自分自身の心の動きを冷静に見つめることが、問題解決に導くための重要なポイントとなります。
例えば、自分の家族に対して極めて強い嫌悪感を持っている患者さんがいたとして、その家族とそう年齢が変わらないスタッフが対応すると、信頼という感情から始まるのでなく、家族への嫌悪感、拒否感がそのスタッフに重なり攻撃的な言葉から始まることがあります。
つまり、本人がさまざまな感情を一人では抱えきれず、ある対象に怒りを向けざるを得ず、身近なスタッフに対して気持ちをぶつける場合があるのです。
その時は、生い立ちを含め十分理解した上で、家族への攻撃的な気持ちが自分に向いたにすぎないと理解する必要があります。
そうすることで、ゆとりを持って言葉を聞くことができ、またそれを継続すれば拒否的感情を修正していくことができるでしょう。